お店で迷わないための「表示について」
喉が渇いてコンビニやスーパーの飲み物コーナーに立ったとき、パッケージに瑞々しい果物の写真があるだけで「これはジュースだな」と手に取っていませんか?実は、私たちが何気なく使っている「ジュース」という言葉やパッケージのイラストには、非常に細かく厳格なルールが存在します。
これらの表示ルールを知ることは、単に中身を知るだけでなく、自分が求めている濃厚さ栄養あるいは手軽さにぴったりの一本を、賢く戦略的に選ぶための武器になります。今回は、難しく感じがちな法律や規格(食品表示法やJAS規格)を解き明かし、納得感を持って商品を選べるようなメリットとしてお伝えしていきます。
「ジュース」と呼べるのは果汁100%だけ!
日本の法律では、商品名に「ジュース」という称号を使えるのは果汁100%の商品だけに限定されています。
- 「果実ジュース」の条件
- 1種類の果実だけを使い、果汁が100%のものだけが、商品名に「ジュース」と付けることができます。
- 「ストレート」と「濃縮還元」の違い
- ストレート:果実を搾ったそのままの液体。風味や香りが強く残ります。
- 濃縮還元:一度果汁の水分を飛ばして「濃縮」し、運搬後に再び水を加えて戻したもの。スープを煮詰めて持ち運び、後からお湯を足すような仕組みで、コストを抑えるメーカー側の戦略でもあります。

僕
ルール上は、「元の果汁と同じ濃度まで水で戻せば、それは100%とみなす」と決められているよ。 極端な話、一度カピカピに乾かしても、正確に元の水分量に戻せば「100%ジュース」として販売できる。だから果汁100%だとしてもストレートとは限らないよ。
- オレンジジュースの特殊ルール(JAS規格1075:2023)
- オレンジジュースには、一定の厳しい条件(重さと糖分が共に全体の10%未満)を満たせば「みかん」を混ぜても良いという面白いルールがあります。これらをクリアして初めて「オレンジジュース」を名乗れるのです。
果汁10%以上100%未満:「果汁入り飲料」の定義
果汁100%ではないけれど、果実の風味を楽しめる飲料は別のグループに分類されます。
- 果汁入り飲料:果汁の使用割合が10%以上100%未満のもの。
- 果実・野菜ミックスジュース:野菜汁が入っていても、果汁が全体の50%を超えていれば「果実」が先にくる名称になります。
こうした「名称の使い分け」を理解することで、パッケージのイメージに流されず、中身の濃さを冷静に判断できるようになります。
「無果汁」なのに果物の絵がある理由
果汁がほとんど入っていない(5%未満)飲料には、視覚情報に関する非常に厳しい制限があります。
- 表示義務:パッケージの目立つ場所に「無果汁」または「果汁○%」とはっきり書く必要があります。
- イラスト・写真の制限:以下の表現は禁止されています。
- 果実の断面図を描くこと(瑞々しさを強調しすぎるため)。
- 本物と見紛うようなリアルな写真を使うこと。
- 表示のデザイン:背景と対照的な色を使い、一目で判別できるように書かなければなりません。これは「絵」から直感的に誤認するのを防ぐための工夫です。
品質の指標:ブリックス(糖度)と酸度
「ジュース」としての品質を保つために、科学的な最低ラインが定められています。
- ブリックス度(°Bx):液体の中にどれくらい果実由来の固形分が溶け込んでいるかを表す「濃さ」の物差しです。
- 果実ごとの基準(JAS規格)
- りんご:10°Bx 以上
- ぶどう:11°Bx 以上
- レモン・梅:甘さではなく「酸っぱさ(酸度)」で基準が決まります(レモンは4.5%以上)。
パッケージにおける「禁止用語」
消費者の誤認を避けるため、原則として使用できない言葉があります。
- 生、フレッシュ:加熱殺菌されているため、搾りたての無加工品と誤解させる言葉は使えません。
- 天然、自然:定義が曖昧で、他より優れていると勘違いさせやすいため禁止されています。
- 純正、ピュアーの例外:原材料が「果汁」と「天然香料」だけで作られている場合に限り、認められる特別な称号です。
アレルギーと安全を守るルール
表示ルールは、私たちの健康を守る「安全装置」でもあります。
- 0.1%単位の表示:オレンジ、りんご、ももなどは、微量でも重篤なアレルギーを引き起こす可能性があるため、1%未満であっても小数点以下まで細かく表示することが推奨されています。
- グレープフルーツの注意点:血圧の薬(カルシウム拮抗薬)の効き目を強めすぎてしまう恐れがあるため、正確な情報提供が不可欠です。
2025年(令和7年)のルール見直し動向
時代の変化に合わせ、消費者庁ではルールのアップデートが進められています。
- 「果粒(つぶつぶ)」の定義統一:食感をより正確にイメージできるよう、定義の整理が行われます。
- 情報のデジタル化:QRコードなどを活用し、限られたパッケージスペース以外からも詳しい情報を届ける仕組みが検討されています(2025年1月時点の検討資料より)。
参考文献・出典(2026年1月25日確認)
- [果実飲料等の表示に関する公正競争規約における規定の解釈について(一般編)] (http://www.kaju-kyo.ecnet.jp/MyPage/kizyunn/220926-5.pdf) (果実飲料公正取引協議会、2022年9月26日 第5版)
- [果実飲料に関する個別品目ごとの表示ルールの見直しの検討について] (https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_250121_03.pdf) (消費者庁食品表示課、2025年1月21日資料)
- [無果汁の清涼飲料水等についての表示に関する運用基準] (https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_29.pdf) (最終改正 平成13年)
- [果実飲料の日本農林規格(JAS規格 1075:2023)] (https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-278.pdf)
- [りんごストレートピュアジュースの日本農林規格(JAS規格 1348:2023)] (https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-277.pdf)

